家族が交通事故の被害者になったら

徒歩で通学する小学生の子供の列に、車が突っ込んだというニュースが流れるたびに、ドキッとしてしまいます。
ニュースを見るたびに、つい他人事と思ってしまいがちですが、交通事故を始めとする不慮の事故は、いつ自分や身内に襲い掛かるかわからないものです。

悲しい 高校生の息子が先日交通事故に遭いました。通学途中、交差点で青信号の横断歩道を歩行中、右折してきた普通自動車と接触して転倒してしまいました。事故直後は自力で帰ってきましたが、午後になって熱が出るなど不調を訴えたので病院にいきました。
驚き それは大変でしたね!検査の結果はいかがでしたか?
教える 病院でレントゲンを撮ったら、腕の骨にヒビが入っていて本人も驚いていました。他にも全身打撲の診断が出て、5日間の入院と通院が必要だと診断を受けました。あと、事故当時乗っていた自転車は、大きく曲がってしまい、もう乗ることは出来ません。
よかった 命に別状がなくてまずは一安心です。事故はいつ我が身に降りかかるか分からないものですから、人身事故の被害者として損をしない知識を身に付けておきましょう。

まず、日本国内で1ヶ月間に起こる交通事故は、実際どのくらいの発生件数か予想してみて下さい。

警視庁交通局交通企画課発表の交通事故統計によれば、平成26年度9月の1ヶ月間に発生した交通事故は46,602件。
なんと1日平均1,553件、これをさらに1時間に換算すると、実に64.7件もの事故が発生していることになります。
交通事故46,602件のうち、死亡事故は336件(平均11.2件/日)、負傷者は1ヶ月間で58,009人という統計が発表されています。 いずれも25年の9月に比べれば減少しているそうですが、こうして実際に起こった交通事故の統計を見ると、狭い日本の中で、いかに事故多発しているのか分かります。

自分の予想より少ないですか?多いですか?
統計を見る限り、事故に遭ってないのが強運のようにも感じてしまうほどの発生件数に、正直驚いてしまいます。
人身事故が起こりうる交通事故として『自動車と自動車』『自動車と歩行者』『自動車と自転車』だけではなく、最近では『自転車と歩行者』の人身事故も注目されるようになり、賠償金額に約1億円の判決が出るなど、重い判決を科すことで事の重大さを多くの人が認識し、車両と人との間に起こる事故を1件でも減らそうとする動きが活発化しています。

ひとえに人身事故といっても、車両が人に直接ぶつかるケースだけではなく、車同士の接触であっても、後ろから追突されて鞭打ちになったり、追突の衝撃で脚が挟まるなど、相手の身体に対して怪我等を負わせることで『人身事故扱い』になります。
接触状況によっては怪我では済まず、重い後遺障害が残ったり、死亡してしまうこともあります。
父母、配偶者、子供など、最愛の身内が、突然の事故で亡くなることは、被害者側が深い悲しみに陥ることは間違いありません。 失われた尊い命は、本来お金で解決できることではありませんが、法律に基づいて『損害賠償』『慰謝料』という形で、解決を求める他ならないのも事実です。

ではもしも、自分や身内が人身事故の被害者になってしまった時、加害者に対してどのような請求ができるのでしょうか? 知らなければ適性な請求が出来なくなり、請求しなければ相手も払ってはくれません。

負傷したのに『物損事故扱い』にして欲しいと頼まれた

困る あの、事故直後は歩いて帰宅したので『物損事故扱い』となったそうですが、実際には怪我をしていたので『人身事故』に変更して貰うべきなのでしょうか?
教える 事故で怪我をされていますし、明らかな『人身事故』となります。医師の診断書を持って警察へ行けば変更が可能ですよ。
納得する 事故から日にちが経過していても変更できるんですね。
教える 変更は事故との因果関係も証明しなくてはならないので、できるだけ早いほうが好ましいです。それはそうと『人身事故』となれば治療等にかかる様々な賠償や補償などが受けられますが、相手の方もしくは自動車保険会社からの連絡はありましたか?
困る それなんですが、先日お見舞いに来られたときに、「入院通院にかかる実費は全て出すので示談で解決させてもらいたい」「壊れた自転車も弁償します」「人身事故扱いにしないで欲しい」と申し出をされたのです。どうしたらいいのでしょうか?
驚き それは困りましたね。もしかすると相手の方は自動車保険に加入してない可能性もありますね。もしくは、人身扱いになって処分を受けると困るので回避したいのかもしれません。

なぜ、加害者は『物損事故』にこだわるのでしょうか?
交通事故を起こした加害者にとって、そこには天と地ほどの大きな違いがあるために他なりません。
まず『人身事故』を起こした場合、加害者には3つの処分が課せられます。

刑事処分 - 刑法や道路交通法違反および交通反則金

人を死亡させた場合は『業務上過失致死傷罪』、怪我をさせた場合は『業務上過失傷害罪』といった刑法が適用され、禁固や懲役、罰金などが科せられます。 起訴されれば刑事事件として裁判を起こすことになります。

行政処分 - 運転免許の減点や取消および反則金

道路交通法に従い、運転免許証の点数が引かれます。累積点数によっては免許停止や免許取消の処分を受け、それに応じた罰金を支払わなければなりません。

民事処分 - 被害者への損害賠償責任

事故が原因で被害者に与えた物的および身体的損害に対して、金銭で補填すること。

上記の他、加害者が自動車保険を利用することにより、保険の等級が上がるため保険料が高くなります。
また示談が成立するまで何度もお見舞いに出向かねばならず、見舞品や見舞金などの別支出の負担が増えます。

実は『物損事故扱い』として処理された場合、刑事処分と行政処分を受けないのです。 そのため、加害者は事故を『物損事故扱い』にしたほうが圧倒的に有利になるので、「物損事故扱いにして貰えないか」と持ちかけるのです。

怪我をしたなら『人身事故』として届けなければ損をする

  
困る あのー、『人身事故』と『物損事故』は補償内容に違いがあるのでしょうか?
教える その交通事故で「人が怪我をしたかどうか」が焦点となります。怪我をしているのにも関わらず、『物損事故』として処理されてしまうと、相手の自動車保険会社は介入しませんから、加害者本人から渡される示談額を受け取って終わりです。
驚くそうなんですね(汗)治療費などの賠償金や、得られるはずの慰謝料を受け取る権利を放棄するようなものですね。
教える 人身事故の賠償請求は、事故がなければ受け取れるはずだった給料の補填や、事故で損壊した物の補償など、被害者が加害者に請求できる正当な権利ですから、安易に相手の申し出を受けるのは避けた方が懸命です。

一般的に人身事故を起こした場合、まず加害者側の自賠責保険から保証されますが、交通事故が『物損事故』として処理されてしまうと、「今回の交通事故で怪我をした人はいなかった」とされ、自賠責保険の適用はありません。
もちろん加害者側の自動車保険会社も動くことはありません。

けれども実際に怪我をしていれば治療費は掛かる訳ですから、その実費は加害者に請求したいところです。
ところが、事故証明書上では『物損事故』として処理されているので、加害者側には支払わなければならないという法的義務がないため、直接治療費を請求しても、相手が拒否することも可能なのです。

当事者同士でお金のやりとりは新たなトラブルとなり、治療をしながら賠償問題のストレスを抱えていては、治るものも治りません。 また事故直後などは、被害者も興奮状態にあり冷静な判断が出来ないため、自分の傷病に気付かない人も少なくなく、被害者が身体的被害を認めなければ、事故の現場検証で「怪我人はなかった」と判断され、『物損事故』とされる可能性があります。
一度『物損事故』として証明されていても、後日医師の診断書を警察へ持参すれば『人身事故』として変更して貰うことが出来ますので、交通事故の被害者になった場合は、異常を感じなくても早急に病院へ出向き、検査を受ける事を強く推奨します。

人身事故被害者ができる損害賠償請求

交通事故の被害者が、加害者や保険会社に対して、請求できるものを大きく分けてみました。
請求するためには『医師の指示に従ったかどうか』『医師の証明があるか』が大変重要となります。
事故による傷病の治療としての実費が賠償対象となるため、その必要性が認められなければ、請求しても棄却される可能性があるためです。

なお、賠償金額については自動車保険会社が独自に社内基準を設けており、実は業界として統一されてはいません。
そのためそれぞれの保険会社の基準に従った損害賠償提示となります。

なお、加害者への『損害賠償請求』は、下記にある項目のうち、適用されるものを全て合計した金額となります。

治療費や事故の影響を受けた実費で、医師の指示や同意があるもの
積極損害
治療関係費 治療費、診察費、差額ベッド代、入院費、リハビリ費
付添看護費 看護・介護の付添費
学費、保育費 事故による治療のために、予定していた授業を受けられなかったり、通学できなくなった場合
旅費 事故が原因の旅行のキャンセル料
その他の必要経費 入院雑費、通院交通費、宿泊代、付添人の交通費、必要に応じて自宅や車の改修費、義足や車椅子などの治療器具や装具の購入費など
休職での給料損害や事故が原因での後遺障害などに対しての賠償
消極損害
休業損害 事故が原因で休職せざるを得ない場合の減収金額賠償(※主婦や学生でも認定される場合もある)
後遺障害慰謝料 事故が原因で後遺障害が残り、算出された等級に対して賠償
逸失利益 事故が原因で後遺障害や死亡などで、得られなくなった将来の収入への損害賠償
慰謝料 死亡、怪我、後遺障害に対する慰謝料は、自賠責基準と法的損害賠償基準によって算出されます。
事故状況を考慮した上で、補償額が増減しますので、損をしないためにも専門家の介入は必須です。
物的損害 交通事故が原因で、壊されたものに対する損害賠償は請求できますが、どんなに愛着があっても慰謝料は請求できません。
事故当時身に付けていた洋服や装飾品などを始め、車や自転車にかかる修理代、廃車になった場合の買い替え費用、代車費用などは相手に請求できます。

※ちなみに、医師の指示や同意がなければ認められないものとして、温泉治療、鍼灸、柔道整復、マッサージ、形成治療費、治療器具購入費、個室や特別室の使用料など多岐に渡り、治療効果が認められた場合でも、費用の一部のみの認定となることもあります。

絶対にしてはいけない『個人示談』

困る 相手の方が「保険屋を通すと時間がかかるので、治療にかかる実費は全額手渡しで支払い、自転車も弁償します」と言ってきたのですが、当事者間で交渉するのはやめた方がいいのでしょうか?
教える はい、避けることが好ましいです。その理由は2つあります。まず被害者の方には治療に専念して頂きたいと考えます。金銭の交渉ごとは「約束したのに払ってくれない」等のトラブルになりやすく、解決までずっと精神的なストレスを抱えることになります。
困る 確かにそうですね。約束したからといって、定期的にきちんと受け取れるか保障がないし、払わないとごねる人もいると聞きました。正直不安です。
教える 2つ目の理由は、示談は一度成立したら覆すことが出来ない点です。当事者間で示談をしてしまい、後日請求できる賠償金や慰謝料に気付いても、示談内容を訂正したり追加したりすることはできません。
困る それは例えば、事故からしばらくして体調不良に陥った時、医師により事故との因果関係が証明されても、示談が成立した後では相手に賠償を請求できないってことですか?
教える もちろんそうなります。しつこく請求を持ちかければ、逆に自分が迷惑行為や脅迫罪等で訴えられる可能性も出てくるので、注意が必要です。
驚く えぇぇ?!示談って慎重に行わなければならないんですね。
おすすめ 交通事故に遭った場合、入院生活や介護生活が始まるなど、それまでの生活が一変してしまうこともあり、肉体的、精神的な負担は計り知れません。 加害者は早く事故のことを片付けて、事故前の生活に戻りたいという気持ちが少なからずあると思います。個人的に示談を持ち掛けられても即決は避けてください。出来れば交通事故案件に強い弁護士に相談されることをオススメします。

『示談交渉』は、どのような内容であっても、一度サインをしてしまうと、特別な事情がない限りやり直すことが出来ないので、個人間の示談では特に注意が必要です。
「その条件で了解しました」と自分で納得してサインをするわけですから、原則覆すことはできないのです。

一般的に事故がおきたときは、自動車保険会社に依頼して介入してもらい、交渉ごとなどを含めてすべてを保険屋任せにする人も、少なくないのではないでしょうか?
保険会社は依頼に沿って事故内容を査定し賠償額を算出、提示をしますが、この賠償額は適正だと思いますか?

答えは「NO」です。

世の中には星の数ほどの保険会社がありますが、保険会社間には賠償金額に対して統一された基準が存在しません。
つまり、保険会社各社が自社で定めた基準に沿って、事故の賠償金額を算出するので、一つの事故を事例に取っても保険会社ごとに提示される賠償金額はバラバラです。

実際に、保険会社も出来るだけ補償金の支払いを抑えたいと考えていますから、当事者双方が妥協できるギリギリの金額を提示する傾向にあります。
それはつまり、被害者サイドが受け取ることができる正しい賠償金額よりも、少ない提示である可能性を示唆しているのです。

賠償金額の算出で一番高い基準が適用されるのが『弁護士基準』です。
これは裁判を前提に事故状況を考えた場合、同一ケースでの過去の判例を基に判断されるためで、被害者として1円も損をしたくないと考えるのならば、弁護士の介入が最善の一択となるのです。

納得する 弁護士の先生に依頼すると、請求漏れのない賠償金が受け取れるとなると安心です。
任せて 交通事故案件に長けた弁護士を選ぶと、様々な視点から事故を検分し、満足のいく損害賠償請求を行うことが可能です。
困る でも、弁護士に人身事故の賠償請求交渉を依頼すると、高い費用がかかるのではないですか?
教える まずはご自身の自動車保険を確認してみて下さい。『弁護士特約』がついていれば、弁護士費用を保険が保障してくれるので、自分で支払う必要がありません。
驚く そうなんですか?!知らなかったです。急いで確認しておかなきゃ!
おすすめ 「弁護士に賠償問題を任せたら、安心して治療に専念できた」「保険会社が提示した賠償金額の倍額を受け取ることができた」と喜びの声も実際にあがっているんですよ。
おじぎ それはスゴイですね。事故後は弁護士の先生に全部お任せして、安心して治療に専念できることも大切ですね。いろいろとありがとうございました!!
おじぎ 人身事故の賠償問題について、お役に立てれば幸いです。『弁護士特約』も保険会社によって保障範囲が違いますので、詳細を忘れずしっかり確認して下さいね。